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腰を深く深く下ろして、目の前からやってくる敵を見据えた。体が燃えるように熱く重い。駆引きはすでに始まっていた。
右か左か、正面か。上手いやつは肩口を狙うふりだとか、シュートを打つふりだとか、細かいフェイントをしておいて、結局リバウンド狙いだったりするのだからたまったものじゃない。
左右上下に振られることが一番嫌いだった。
*
物心ついたときから体が大きく、他に目立っていいところもなかった俺は、小学一年生のころからずっとゴールキーパーをしている。アイスホッケーでは通称ゴーリー。
別になりたくてなったわけではないが、特にやめたい理由もないし、今やめてしまうと中学生でゴールキーパーがいなくなってしまう。つまり、試合に出られない。
下の学年にもゴールキーパーはいるが、小学五年生。小学生は中学生の試合には出られない。俺はどうやったってゴーリーからは逃げられない運命、いや宿命なのだ。
でも何だかなあ、と最近はよく思ってしまう。こんなガチガチの防具を身にまとって、雪だるまみたいな格好でひたすらにゴールを守っていても、なかなか注目されることはない。
それどころか、一点決められてしまっただけで「ああ~」という顔を会場中にされてしまう。ため息が聞こえてくるのもしょっちゅうだった。いくら広い会場だといっても、ちゃんと俺のところまで届いているのだ。「ああ~」って一番思ってるのは俺だからな。
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