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紫色の着物に身を包んだ神様の後ろ姿は背筋がピンと伸びていて神様らしく、妖しげでかっこいい。
神様は一番後ろに建っている本殿に向かって歩いていく。
神様いかないで戻ってきてと叫びたいのに声が出ない。わたしは、だんだん小さくなっていく神様の後ろ姿を見つめているだけだった。
そして、遂に神様は本殿の中へと消えてしまった。
「神様!」とわたしは叫んだ。神様の姿が本殿へと消えてしまってからようやく声が出た。
「勝手に居座り勝手に消えてしまうなんて自分勝手だよ」
わたしは大声を上げその場にしゃがみ込む。そんなわたしの肩に華夜ちゃんが手を置いた。
「神様が帰ってしまったね」
華夜ちゃんのその声は哀しげだった。
「うん、帰ってしまったね」
わたしの瞳から涙がぽろりと零れ落ちた。
賑やかな神様と狛子と狛助の姿が見えなくなったならまちの神社は静寂に包まれた。
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