8 神様と狛犬達

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 それから数日後。 「おばあちゃん、おじいちゃん、おはよう」  わたしは元気よく朝の挨拶をする。 「奈夜ちゃんおはよう。今日の朝ごはんは茶がゆよ」 「わ~い、美味しそう」  わたしは、木製のテーブルに並べられた奈良県の郷土料理であるほうじ茶で煮込んだ茶がゆと奈良漬、それから玉子焼きに視線を落とした。わたしは茶がゆが好きなんだ。 「奈夜ちゃんそうそうお母さんから葉書が届いているわよ」 「えっ、お母さんから」  わたしはおばあちゃんが差し出した葉書を受け取る。ちょっと嬉しくてそれからドキドキする。久しぶりに手紙をくれるなんてどうしたのかな?  わたしは、ゆっくり葉書に書かれている文面に目を落とす。  すると、そこにはお母さんの達筆な字で『奈夜ちゃん、元気ですか? 学校は楽しいですか。お正月におばあちゃんの家にお父さんと里帰りします。母より』と書かれていた。 「うふふ、お正月にお母さんとお父さんが帰ってくるわね」  おばあちゃんは柔らかい微笑みを浮かべた。その隣でおじいちゃんもお日様みたいなぽかぽかの笑みを浮かべている。  わたしは幸せだよ。神様ありがとう。  頬を緩め茶がゆを食べようとしたその時。 「奈夜ちゃん、茶がゆと奈良漬は良く合うな」とどこかで聞いたことがある声が聞こえてきた。  なんだか懐かしい声だ。その声は艶やかで人間離れしている。わたしってば空耳も聞こえるようになったのかなと顔を上げると。
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