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「えっ? 嘘でしょ!」
わたしの目の前には……。
「奈夜ちゃん久しぶりじゃな」
「神様! どうしているの? 神社に帰ったんですよね」
そうなのだ。ほっぺたにごはん粒をくっつけ茶がゆを美味しそうに食べる神様がいた。
「うむ、帰ったのだが狛子がお別れの挨拶もしてないと駄々をこねるのじゃ、それと、一週間に一度くらいは神様休暇も必要かなと思ってな」
神様は妖しく笑った。
「それって神様……まさか」
「そうじゃ、一週間に一度はこの家でゆっくり寛ぐぞ」
大きく伸びをする神様の隣には狛子と狛助もいた。
「奈夜ちゃん、ただいま。神様ってば酷いよ、わたし奈夜ちゃんにちゃんとお別れの挨拶もしていないんだよ」
狛子はぷくっと頬を膨らませ神様の顔をちらっと見る。それから視線をわたしに移しにぱっと笑う。
「奈夜ちゃん、ただいま。えへへ、お別れの挨拶をしたのに戻ってきてしまったよ」
狛助は照れたように笑い頭をぽりぽり掻いた。
「神様、狛子ちゃん、狛助君お帰りなさい」
わたしは満面の笑みを浮かべた。神様と狛犬達がまた、この家に来てくれて心から嬉しい。けれど……。
「神様、わたしの涙を返してくださ~い!」
わたしは頬をおもいっきり膨らませ神様を睨んだ。でも、本当は嬉しくてたまらない。また、泣いてしまいそうだよ。
「あはは、いいじゃないか。涙は減らないぞ」
「わたしも泣いたよ」
「僕もだよ~」
「そっか、そうだよね。神様、狛子ちゃん、狛助君帰ってきてくれてありがとう」
わたしは、とびっきりの笑顔を浮かべた。そして、少しだけ涙が零れた。
今日食べた茶がゆの味とパリパリした歯応えの奈良漬は一生忘れないと思う。
神様、これからもよろしくね。
「完」
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