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俺の狙いは、麻衣をお酒に溺れさせること。
昔から、不穏なことがあるとアルコールに逃げる元妻の悪癖を思い出し、それを利用することにした。
国分に指示をし嫌がらせをさせ、一度は俺が窮地を救う。
そうすることで、俺に対してもガードが緩くなる。
解決したと見せかけ、再び嫌がらせをして追い詰めようとしたのを、伊原が一気に捲ってくれたというわけだ。
麻衣は今、絶望の淵に立っているのだろう。
落ちまいとして、ワインに手を伸ばす。
飲むことはいずれ、地の底に落ちていくとも知らず。
その証拠に、果穂の誕生日を忘れるという大失態をおこした。
俺が誕生日だと伝えた時の、驚きとショックに満ち溢れたあの顔。
ただ、まだ『母親失格』だと烙印を押すには足りない。
俺の目的を確実に果たすためには、もうひと押し決定的なものが欲しいところだ。
つまり『麻衣が酒によって取り返しがつかない事態を引き起こす』という事実。
アルコール依存性という背景は出来上がった。
あとは、たとえ捏造してでも既成事実を作り上げる。
仕事のミスを誘導するか、それとも果穂関連か?
いや、果穂は伊原のことで傷ついたはず。これ以上、俺の大切な娘に負担はかけさせたくない。
となると、自然と絞られてきて…俺は息子の愛らしい寝顔を思い出していた。
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