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「麻衣、大変だったわね。大介から連絡もらった時は驚いたわよ。その人からプロポーズ受けるみたいなこと言ってたからさ」
有田美紀の表情も、どことなく沈んでいる。
昔から麻衣と張り合うようなところもあったが、さすがに今回のことは気の毒に思っているらしい。
「だから美紀に励ましてやって欲しくて」
「でも、かなり落ち込んでたわ。ずっとお酒ばかり飲んで、途中で止めて家に送り届けたわよ」
「あまり飲まないように俺も言ったんだが…」
そう言いながら、思惑通りに進んでいることにほくそ笑む。
「ねぇ、やっぱり麻衣のことが好きなんでしょ?」
「まだそんな下らないこと言ってるのか?」
現に俺は、麻衣をもっと痛めつけようとしている。
二度と立ち直れないほどに。
それは俺のことを地獄に叩き落とした仕返しであり、復讐だ。だから麻衣に気持ちがあるなんてことは──。
「奥さんとはうまくいってないんでしょ?」
「なんだよ急に」
「あの子とうまくいってて夫婦円満なら、わざわざ別れた女房に構わないでしょ?大介は今が幸せじゃないんじゃないの?だから麻衣が幸せになるのも許せないとか?」
「そんなわけないじゃないか」
「それじゃ、夫婦仲はいいのね?」
「…あぁ、どうかご心配なく」
そう言って笑い飛ばして見せたが、うまく笑えただろうか?
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