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それから私はあの人に荷物をまとめるようにいわれた。すぐに出るのかと思うと、少し寂しい気もする。300年ほど過ごした小屋はもう使われないのだから。何度も何度も補強したけど、もう補強することもないのか。そう思うと、また寂しく感じた。
荷物をまとめるように言われたはいいものの、まとめる荷物がほとんど無かった。貴族の養子になるなら蝋燭などの生活用品はいらないだろうし、食料も必要ない。お金と宝物くらいだろうか。
「…なんか怖い。大丈夫だと思うけど……」
不安になりながらも、私は荷物をもってあの人の所へ向かった。
あの人の所へ来ると、皆が「元気でね」と見送ってくれた。私は嬉しくて泣いちゃったけど、すぐに泣き止んで「ありがとう。皆も元気でね」と言う。
「もう大丈夫かい?大丈夫なら馬車に乗ってくれるかな。」
「……わかりました。」
私は馬車に乗って、皆が手を振っているのをずっと見ていた。馬車が走り始めるとどんどんそれが小さくなっていく。私は見えなくなるまで手を振り返した。見えなくなってからは普通に座り、姿勢を正していた。
「緊張しないでいいんだよ。君はこれから私の娘になるんだから。」
そうは言ってくれたが、緊張せずにはいられなかった。
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