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僕らは高二だから無論付き合ってる生徒もクラスにいる。でも、有坂さんはそういうのとは無縁だと思っていた。けして魅力的でないわけじゃない。でも、余りにも無垢に見えて、彼氏なんてまだいないと思っていた。
「二股かけられてたの! 酷くない?」
「あ……うん。酷いね」
二股……。趣味が合わないとかじゃないんだ……。
何だか大人な理由だと僕はショックを受けてしまった。僕なんて付き合ったことだってない。おずおずと尋ねてみる。
「その……相手は誰なの? 大学生とか?」
「……日野君」
「ええええ!」
思わず声を上げて驚いてしまった。日野は「オタクの中のオタクを極める!」と自ら公言していて、Vチューバ―に青春を賭けてるような生徒だ。控えめに言っても非モテだと思っていた。
でも、有坂さんと付き合っていて、更に二股まで……。
僕は何だか目眩がして来た。
「冗談だよ」
僕が視線を向けると有坂さんがいたずらっ子のように笑っていた。
「二股とか日野君とかは嘘。でも、クラスの誰かに失恋したのは本当だよ」
「ああ……そうなんだ」
「ねえ、寺門君も手伝ってくれない?」
「何を?」
「悪口を書くのを」
驚く僕に有坂さんはチョークを差し出した。
「いや、でも……」
戸惑う僕に有坂さんは真剣な顔をした。
「相手の悪いイメージを膨らませて、ちゃんと嫌いにならないと失恋って乗り越えられないって三井先生が言ってたから」
三井先生は保健の先生だ。
そうか。有坂さんは三井先生に相談するほど悩んでるんだな。
僕はチョークを手に取った。
「よし! 手伝うよ!」
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