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如月
元禄十六年如月の月。
各四藩に御公儀より速馬にて切腹のお沙汰になりましょ。
伊予松山藩十五万石藩主松平隠岐守定直に預けられし者十名なりて。
その十名には!
大石蔵之介が嫡男「大石主税良金」この時十と六歳の元服すましてのまだ幼き顔達にてになりましょうとて。
半刻が過ぎて「堀部安兵衛武庸」は切腹場にて座りまする。
上使検診役から声が掛かります。
「その方の辞世の句があるや?」
堀部安兵衛武庸は上使検診役に聴きます。
「大石主税良金は武士として切腹の儀を見事に務め挙げましてか?」
上使検診役が答えます。
「まことに天晴れなる最後にて誠の武門者であり申した」
「某一同の筆頭にて本懐を相達しましたる上に切腹仰せつけられますること、まことに武士とて有難く存じ奉ります」これが死を目前にした十六歳の大石主税良金の言葉でありました。
堀部安兵衛武庸はその有り様を聴きて微笑んでおりました。
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