八の痛みと九の気持ち

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八の痛みと九の気持ち

朝、職場に行くのに家を出た。 「八角(はっかく)、おはよー」 「酒臭いんやけど」 出ていこうとする腕を掴まえられた。 「また、男にふられたんか?」 俺は、水を差し出した。 「冷たいなぁ、おかんの事、また捨てんの?」 「仕事やから」 ネクタイを引っ張られた。 「キスしようとすんなよ」 「嫌」 俺は、この人の言いなりの玩具は嫌だ。 「八角、あんたに色気を教えたんはうちやで。わかるか?」 「離せ。金が欲しいだけやろ」 「ネクタイはずせ。」   「嫌じゃ、もう俺は、30やぞ。あんたの玩具やない」 「八角。会社に働かれんくまたしたろか?」 俺は、ネクタイを外す。 「こっち座って」 ソファーに座らされた。 「八角は、女性はお母さんだけよね?」 カッターシャツのボタンをはずされていく。 「そんなわけあるか。俺は、あんたのせいで、クソビッチになったんや」 「へー。ビッチになったん。色んな女抱いて。色んなやつ味わって。八角、なにしてんの?」 「やめろ」 「八角」 深いキスを無理やりされた。 「やめてくれ、せっかく綺麗になれるんや。だから、もうやめてくれ」 母親は、立ち上がった。 (きゅう)にキスしたい。 舌を切り落としたい。 「八角死のう」 「えっ?」 母親は、包丁を持ってる。 「やめてくれや」 突進してきた母親の包丁を左手で受け止めた。 「痛い。やめろや」 俺は、母親を突き飛ばした。 「八角、またあんたうちを捨てんのか」 財布の中から、全財産を投げつけた。 「殺人犯になりたないんやったら帰れ」 母親は、俺の言葉に金を拾い集めて出ていった。 はあー。 九に指輪買いたいからお金おろしたのにな。 30万、渡してもうた。 俺は、腕を押さえ続ける。 血が止まらなくて病院に行った。 縫わずにいけてよかった。 俺は、九のアパートに座っていた。 九が、包帯をかえてくれる。 「なあ?九」 「うん」 消毒をしてくれる。 「痛ない?」 「痛い」 「ごめん」 「そこやない。」 あの女に(さわ)られた。 「えっ?」 俺は、九の手を胸に持ってくる。 「胸?」 「九、俺ね。家出たんわ。性の対象にされてたからやねん。」 「性の対象?」 「母は、男に捨てられて酔っぱらったら、俺を求めた。父に似てるから。やっと、綺麗になれるって思ったのに。九、やっぱり、(きたな)いままやわ。俺」 「八は、(きたな)くないよ」 「九。帰るね」 そう言った俺の手を引き寄せた。 「綺麗にして欲しくてきたんやろ?」 「九、俺の事気持ち悪いって思わんの?みんな、話すと放れていったよ。親とそんな事する奴は気持ち悪いって」 「気持ち(わる)ないよ。座って」 俺は、ソファーに座らされた。 「八、泣かんでよ」 「ごめん。もう、こんな人生嫌や」 俺は、九の前で泣いていた。 . . . . . 八は、僕の前で泣いていた。 もっと先に進めば、兄が竹君に感じたように僕にも八の気持ちが… 「八、キスしてもいい?」 「うん」 僕は、八にキスをした。 「舌食べてくれん?」 「えっ?」 八は、そう言って泣いていた。 涙を拭って、キスをした。 僕が、八を守るから…。 そう思いながら、深く優しくキスをした。
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