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「区別がつかなくなった人は、とにかくバカでかい『感情』を抱くんだよ。
それは怒りだったり、独占欲だったり、加虐心だったり色々あるけど、とにかくそういう人は普通の人なら『現実でそれをやったらアウト』ってわかることも分からなくなって、バカでか感情の赴くままに行動しちゃうんだよね。」
東藤が喋ってる間、なぜかだんだんと僕の意識が朦朧としてきた。
…あれ、なんで?
なんか、だんだん、僕の皮膚がしわしわに…
「種はその『感情』を養分にして発芽して花を咲かせるんだ。ほらみて、この花。リアルとフィクションの境が曖昧になったことで、どこまでも欲望に忠実で醜悪で、そいつの内面が見事に具現化された芸術的な花だろ?
俺はさ、この花を集めるのに嵌ってんの。一番見事に咲き誇ってるときにこの鎌で刈り取って、俺の家の庭に埋めなおすんだ。」
体が、動かない。
声も出ない。
皮膚が干からびて割れる。
骨が軋む。
東藤の声が段々聞こえなくなってきた。
意識が、遠のく―――…
「この花は間もなく君の『感情』という養分を全部吸い尽くして、最高の見ごろを迎えるよ。倫太朗ちゃんはいわば堆肥。
栄養を吸い尽くされた堆肥がどうなるか知りたい?
あ、もう遅いか。」
(終)
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