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家に帰ってから、ママに塾の春考査の結果を渡した。
総合順位は2位。1位は東藤だ。
結果を見たママは頭を抱えた。
「また2番?何がダメなのかしら。中3でこれじゃ先が思いやられるわ…」
「でもママ、ほら、数学は前3位だったのに1位なったよ、」
「でも総合じゃ1番じゃないでしょ。低いところで満足してちゃだめよ。」
ママはこういうと、ぐったりとソファに持たれた。
そして再度結果の紙を見る。
「1位の子、普段どんな勉強してるのかしら。今度聞いてきなさい。」
「…アイツ、普段漫画とか読んでるよ。」
「漫画読んでるような子に負けるなんて、恥ずかしくないの?」
ママが鋭い声で言った。
ママはすごく教育熱心だ。「漫画は心と脳みそを馬鹿にする」「ゲームは時間の無駄」と言って、この家にはそういったものは一切ない。
「ごめん…もっと頑張るよ。」
僕はこういうと自室に戻った。
自室にあるのは、勉強机、そして壁を覆いつくすような本棚。部屋にベッドがあると途中で怠けるかもしれないと言われて、ここにはない。本棚には各教科の参考書、それに図鑑、世界の名作小説、日本の文豪が書いた小説がびっちりと並べられていた。
でも、僕が一番読み込んでいるのは本棚にある本じゃない。僕が一番読んでいるのは、机の引き出しの中に隠しているモノ。
―――――『人魚姫』の、絵本。
漫画なんか、嫌いだ。塾の馬鹿共が好きなものなんて規制されてしまえ。エロも暴力も僕には関係ない、僕は読むことができないんだから。
だったら無くなってしまえ。
ゲームも漫画も持ってない僕の、唯一のモノ。
小さいときに買ってもらった人魚姫の絵本。
角がボロボロになるほど開いた。眺めた。
挿絵がたくさんあって、そこに描かれている可愛い人魚姫の絵が、
絵が…
ごくりと、生唾を飲み込んだ。
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