夢現に咲く。

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塾で馬鹿共に「人魚姫とか絵本レベルでイロイロ満足できちゃう感じ?」と言われたとき、背筋が凍った。 いやでも違う、僕にやましい気持ちなんて1ミリもない、別にこの絵で抜いてるわけじゃない、何も悪いことなんてしてない、ただ絵を眺めてるだけだ。ああでも…、やっぱりイイ。 リアルに、緻密に描き込まれているわけじゃないけど、僕が唯一持っている、腰が、胸が、素肌の女体が描かれている本。 かわいい… エロは規制すればいい。 暴力も規制すればいい。 僕には関係ない。 僕はどうせ読むことができないんだから。 「倫太朗、今何してるの?静かだけど、まさか寝てないわよね??」 ママが扉の外から声をかけてきた。 僕は慌てて絵本を閉じて机の引き出しにしまうと、問題集とノートを開いた。そして部屋の外にいるママに声をかける。 「寝てないよ、ちょっと分からないところがあって、手が止まってたんだ。」 「そう、ならいいわ。分からないことを分からないままにしちゃだめよ。後でママに問題を解いたノートをちゃんと見せてね。」 「はい、ママ。」 早く勉強しなくちゃ。 そうしないと、またママに怒られる。 ごはん抜きにされる。 **** 次の塾の日。 休憩時間、馬鹿共は雑誌に連載中の暴力的な漫画の展開に盛り上がっていた。その声の煩さのせいで理科の問題がうまく解けない僕は苛立ちが強く募る。 何が面白いんだよ、そんな単純な展開の漫画。 主人公が敵を殺して勝つ、どうせその繰り返しだろ?読んだことないから知らないけど容易に想像がつく。日常生活では暴力はいけないことだと教えられるのに、漫画ではそれが娯楽として扱われる意味が分からない。 なぜ漫画では暴力で解決することが許されるんだ、それなら僕だってあいつらを殴っていいのか? ああ、全部有害だ規制しろ。 こいつらから楽しみを奪ってしまえ。 むかつく。 楽しそう盛り上がる、その姿が。 「そういう暴力で全部解決する漫画って低俗だし、騒いでるやつらも同レベルだよな。ここは塾なんだよ、勉強してる人間の邪魔するならさっさと塾辞めろ!!」 むかつく、むかつく。 なんでそんなもん読んでるのに東藤は1位が取れる?ほかの連中もそこそこの順位をキープしている?明らかに僕より勉強していないんだから、馬鹿は馬鹿らしく底辺で見苦しくもがいてろよ…!! 僕の声に馬鹿共は目を吊り上げた。 さすがの僕も怯んでしまう。 だけど、救世主が現れた。
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