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塾の休憩時間は、相変わらず東藤たちがウザい。
でも氷川さんに注意された効果なのか、以前よりは声が小さくなっていた。あいつら何のために塾に来てるんだ?やる気がないなら早く辞めてくれないだろうか。そう思いながらペンケースから消しゴムを取り出そうとした。
「あっ、」
コロンと、跳ねるように飛び出た消しゴム。それは氷川さんの足元に転がっていった。
「あ、」
女子に、なんて声を掛けたらいいか分からない。だって僕はクラスの女子と全然話さないから。
クラスの女子は僕が近寄るだけで「目付きキモ」と言って、僕から逃げていく。僕は何もしていないのに。ちょっとそっちを見ただけなのに。
ああどうしよう、氷川さんに何と言えばいい?声はどうすればいい?キモくない喋り方ってどんな感じだ?と思って言葉に詰まっていると、気づいた氷川さんが消しゴムを拾って、優しく微笑みながら僕に消しゴムを差し出してきた。
「はい。これ、但馬君のだよね?」
「あ…、ん…」
蚊の鳴くような声で返事をする僕。
消しゴムを受け取る時、ほんの少し氷川さんの指に触れてしまった。でも彼女はそれを嫌がることなく「勉強頑張ろうね」と言ってくれた。
氷川さんの微笑みが、肌の感触が、僕の細胞という細胞を興奮させる。
「…あーあ、もう蕾ができたんだ?」
どこからともなく、声が聞こえた気がした。
エロい漫画も、暴力的で残酷なアニメも見ない。
見たくない、興味ない。
僕にはそういう低俗なものは必要ない。
僕はあいつらとは違う。
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