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塾で、氷川さんの方をどうしても見てしまう。
次の塾の時、やめようと思ってもそれがやめられなかった。それに、頭から離れないんだ。
あの夜の、淫らで可愛い氷川さんが。
氷川さんもそんな顔するんだって、僕びっくりしたよ。
塾の授業中も、休憩時間中も上の空。
どうしよう、氷川さんにいつ声をかけよう。そうだ、連絡先を交換したら喜ぶかな?塾が終わったら内緒で後をつけて驚かせてみたらどんな反応をするかな?頭の中で、人魚の姿の氷川さんが僕に向かって微笑む。
ねえ氷川さん、どう思う?
――――私のこと、但馬君の好きにして…♡
氷川さんが、こういった気がした。
「花が、咲いちゃうよ。」
誰かが、遠くの方で言った。
****
授業が終わって、氷川さんは友達と塾を出た。
ああ、友達邪魔だな。
早く氷川さんと二人きりになりたい。氷川さんとお話したい。氷川さん、後ろからワッてやったら驚くかな。氷川さん、氷川さん。
氷川さんの友達が皆いなくなる頃には、道路はだいぶ人気が無くなっていた。氷川さん、こんな道を一人で帰ってるのか?危ないな、今度から僕が護衛してあげた方がいいんじゃないかな。
ああ、ドキドキする。こんな暗い道で二人きり。もしかすると何かドキドキなハプニングとか起きたりして…
僕は意気揚々と氷川さんの背後に忍び寄った。
そして彼女の手をぎゅっと握った。
「氷、」
「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!??」
突然、甲高い悲鳴を上げた氷川さん。
それに驚いた僕は慌てて後ろから氷川さんの口を塞ごうとした。
「ひ、ひか、ひかわさっ、落ち着いて、」
「助けてっ、だれか!!」
「ひ、氷川さん、僕だよ、但馬だよ、」
「但馬君!?な、なんでこんなことするの、放して!!」
暴れて僕から離れようとする氷川さん。
まって、氷川さん落ち着いて。落ち着けばわかるから、どうしよう、このまま逃げられたら氷川さんに誤解されてしまう。それだけは回避しないと。
僕はますます氷川さんの手を握る力を強めて、ガッチリと拘束した。
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