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1と10
最後の夏の大会。
俺のもらった背番号は、10だった。
隣の上村が、
俺のもらうはずだった背番号1を持っている。
1に0がひとつ付いているだけで、
重みも、価値も、何もかもが違う。
顧問の話を聞きながら、
背番号10を強く握りしめる。
校庭にサッカー部の連中がぞろぞろと出てきた。同級生の星や村井がこちらを見ている。
「お、やっぱり1番は上村か」
「そりゃそうだろ。だって」
帽子の中に、じわっと汗が染み出した。
様々な雑音が流れ続ける中、その言葉だけははっきりと、確実に、俺の耳に届いた。
「エースだもんな」
俺は、エースになれなかった。
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