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私「それがね」
娘「うん」
私「その手紙読んだとたんに、やだってなった」
娘「は?なして?」
私「思春期の理不尽さとでもいうか、あこがれてあこがれて、神格化とまではいかないけど、そんな人が私なんかに振り向いちゃいけない」「あんなに両思いになることを祈って、こっそり相合傘を石に刻んだりしたのに、その夢はかなったとたんに陳腐なものになってしまう」「矛盾してるよね」
娘「引くわあ」
私「初めて先輩の家に電話して、お母さんが出たんだけど、代わってもらうこともせず、もうお手紙は出しません、先輩にもお手紙要りませんと伝えてください」「そう言ったんだ」「お母さんは、あらそうなの?…残念だわね」「で、終わった」
娘「先輩、なんか勝手に振られたみたいになっとるんだけど」
私「そこよ、持ち上げといて落とすみたいなね」「本当に申し訳ないと思う」「もう40年以上も前の事だし、先輩も結婚されて、もしかしたら孫だっているかもしれないじゃないって思うんだけど、会ってお詫びする勇気もないまま…」
娘「なるほど、思春期のいたりですな」
私「若気の至りじゃなくて?」
娘「思春期のホルモンがそうさせたのさ」
私「聞いてくれてありがと」「たぶん死ぬまで先輩ごめんなさいって小さく思い続ける」
娘「はは、小さくね」
私「小さく、ご・め・ん・な・さ・い」
完
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