クジラ爆弾

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「そうですか。私は知らなかったんです。死んだあとに体内のメタンガスが爆発して、内臓が飛び散るの。ものすごい悪臭みたい」 なんと、この場にそぐわないセリフであろう。お行儀よく低いトーンで話しているから周りに溶け込んではいるけれど、もしもボリュームが大きければ注意されてしまいそうな内容だ。「悪臭」だなんて、ねえ? 女性は30代半ば…いや、40近くだろうか。真っ赤な口紅に、丈がくるぶしくらいまである黒いモード系のワンピース。ボブの髪の毛に鮮やかな紫色のメッシュが入っていて、オーソドックスなお見合いの服装とはかけ離れている。髪型もメイクも、彼女の優しい目元や口元に似合っていない。コンサバな恰好をすればさぞかし清楚で素敵だろうに。ま、これは余計なお世話か。
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