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さておき、私のデフォルトがスン……となったのは親に対する意地です。まだ子供ですから仕方ない、食べ物と、着るものと(お下がりだけど)、寝るところの世話にはなりますが、他には何も望まない受け取らない。そう決めました。
母に対する反発心も芽生えました。理不尽だ、と、はっきり思うようになったのです。ようやくです。意を決して口にすることもありましたが、そのたびに、例の『誰のおかげで――』が始まるので、返す言葉もなくなってしまうんですけどね。あれを出されると、完敗です。その通りです。私は母と父のおかげで生きていましたから。
……自分の意見を言ってみても、かえって惨めになるだけでした。
理不尽の極みと言えるのが、髪の毛を切られたことです。私は髪を長くしているのが好きで、ずっと伸ばしてたのですが、修学旅行前、行きつけの床屋に勝手にオーダーされていたのです。ショートカット、一丁! と。
母は私の長い髪が大嫌いでした。常日頃から『寝ている間に切ってやる』などと言われていましたので。そう言われるたび、悲しくてしょんぼりして、枕を濡らしていました。
しかし思えば一年生の頃から自分で結っていたのだから母には何の手間もかけていないのに、なんでそんなこと言われなきゃならなんだと、六年にしてようやく気が付きましたね。
床屋ではまんまとやられましたよ。電話してあるから行ってこいと言われ、行きました。おじさんは『いらっしゃい。お母さんに聞いてるよ』と、迎えてくれて……いきなり首のあたりでザックリですよ。私が『あっ』と、声を上げたら、ん? みたいな顔をして。おじさんは悪くありません。注文通りに通りにしただけでした。
家に帰ると母は笑いました。サッパリしたじゃん、と言いながら。何の笑いかよ。と思いました。
母が言うことには、修学旅行では急いで風呂に入らなければならないから短い方がいい、とのこと。くそくらえです。やるのは私です。あの時ばかりは口汚い一言が出ましたよね、心の中で。
夜、床に入って泣きました。うんと泣きました。翌日は学校も行きたくなかったけど、いや、どうでもいいか。どうせもともとクラスではイジメられてるんだし、家にいる方が用事を言いつけられるし。と、もうどうでもよくなりました。
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