第一章

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第一章

今回私が皆さんに伝えたいこと、それは 「たかだか電話で、ひとは死ぬ」という事です。 これ、実話です。 2007年、私は生命保険の電話販売の仕事をしておりました。 「コールセンター」「テレアポ」「電話営業」などといわれる仕事です。 簡単に言うと、一般の自宅へ電話をして「保険に入りませんか?入りましょうよ」といって契約を募る仕事です。 この仕事、はっきり言って、超ブラックでした。 今回のテーマは「たかだか電話で人は死ぬ」なので、 ブラックな様相をお知らせするのはまた次回に取っておくとして まず仕事の流れの概要をお伝えしよう。 まず、会社から電話をする。 もう日本全国の皆さんへ文字通り手当たり次第に。 電話帳をデータベースして、電話をコンピューターにつないで自動発信する。 オペレーターはパソコンの1クリックですぐ電話をする。 電話帳を、順にかけていく。 もう完全にしらみつぶしに電話をしていく。 一県だけで何十万、何百万戸とあるのでリストは尽きることはない。 その代わり、どんな人間が電話に出るかわからない。 そんな相手に「保険入りませんか?」と問いかけるのだ。 普通に考えて入るわけはない。 それでもなんか不思議なもので50人~100人くらいと話していると 「じゃぁちょっと話聞いてみようかしらね」なんて言ってくる人もいるので そんな人にはパンフレットを送付する。 言葉にするとうまいように行っているように聞こえるかもしれないが 実際のところ、パンフレットを送るのは半ば強引だ。 相手が「保険?いらないよ」と言ってきたら 「そうなんですよ、皆さん保険って興味ないですよね。 だけど今回はそんな方でも見てもらいやすい保険が新しくできたんですよ。 せっかくなんでパンフレット送るんで見るだけでも見てくださいね~」 みたいに、そりゃもう受け取るまでのボーダーを極限まで低くする。  そうしてパンフレットが届いたあたりにもう一度電話をして 「こんな感じなんですよ、いい保険でしょ、入りましょ」とクロージングする。 ちなみにパンフレットにはもれなく申込用紙とそれを送る返信用封筒がついている。 相手の方が素直に話を聞いて申し込み用紙に記載してくれてそれを投函してくれて保険会社へ届けばめでたく一成約となるのだが、果たしてそんな上手くいくものなのか? 行かないのである。
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