第二章

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第二章

私らオペレーターは必死だった。 せっかくパンフレットを送ったのであるから、何としても申込用紙をかいてもらわないといけない。しかしもともとが入る気のない人へ送るものだから、話も弾まない。 そもそも昼に電話をかけて対応してくれるのはよほど暇な人だ。 オペレーターは毎日、9時に出勤し、なんやかんや事前準備をさせられて 10時から21時までの間でおよそ400~500件の電話をする。 その中で話を聞いてくれる人を見つけて「詳しく話聞きたいわ、資料送って」といってパフレットを10通送ることが出来れば御の字。 10通パンフレットを送ったうち、一人が入ってくれればもう万々歳だ。 となると一日に一人、保険に入ってくれればいいわけだが、それを達成できたのはまぁ数百人いるオペレーターの内、上位3割程度だったのではないか。 朝8時に家を出て 9時に会社に到着し、昨日の反省や今日の準備をする 10時から13時までが午前中。 13時から14時までは一応お昼休みという事になっているが 契約をとれていないものはのんびり休むことはできずその間も電話をしまくる。 そして19時までが「定時」なのだが定時で帰れたことは一度もない。 「みなし残業」といって一日2時間までだったら残業を強要(?)することが出来るらしく21時まで電話は続く。 法的に、お宅へ電話をすることが出来るのは朝10時から夜21時までとなっているらしいのでそれ以上の電話はしないという事になっているので法令を遵守する一面も垣間見えるのだが、21時から今度は、お客へ送るパンフレットにメッセージをかいたり宛名を書いて送付する時間になり、結果報告やらを上司にするわけだがそこで一件も獲得できなかったり、月間での目標進捗に満たないもの(といっても半分以上だが)は上司にいろいろと問い詰められる。解放感も全くなく、明日の出勤に絶望しながら会社を出るのがおよそ22時。家に帰ってくるのは23時を超える。  仕事から解放されたはずの身なのに常に思うのは「さっきは仕事で嫌だった」しかなく 朝起きても「これから会社嫌だ」と思い、プライベートを楽しむ余裕が全くない。 それでも仕事である程度の成果が出れば充実した気分になるものだろうが。  そんなだから、せっかく入ってきても離職率がとても高かった。 2週間に一度、およそ20人ほどが中途で入社するのだが 3か月後残っているのは半数程度。 今考えるとどう考えても異常だった。 さっさとやめるべきだったのにそうしなかったのは俺がいろいろと洗脳されていたからだ。
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