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「ねぇ母さん、伯父さんたちの様子ちょっと変じゃなかった?」
亮太のことを尋ねた時に伯父夫婦の取った態度がどうにも気にかかった。すると突然母が嗤い出す。
「何よ母さん、どうしたの?」
尋常じゃない母の様子に私が顔を顰めると母は私の顔をじっと見て言う。
「そうね、あなたももう大人ですもの。本当のこと、教えてあげるわ」
「本当のこと?」
母が語ったのは信じられないような内容だった。
「え、私は母さんの子じゃないってこと?」
私は母の親友だった女性の娘で本当の父親は伯父さんなのだ、と母は言う。
「母さんもこの街の出身だってことはあんたも知ってるでしょ? 母さんはあの男の弟と、親友はあの男と付き合ってたの。なのにあの男は妊娠した彼女を捨て今の奥さんと結婚した。元々子供の産めない体だった母さんはあんたを引き取って遠い街に引っ越したの」
俄には信じがたい話だ。いや、そんなことより……。
「ちょっと待ってよ。じゃあ私と亮太は……」
「そうよ、異母姉弟ってこと」
嘘でしょ、と呟く私に母は続けた。
「だから言ったでしょ? あまり仲良くするなって。あの最低な男は母さんの親友が子供を産んだことすら知らなかったはずだわ。だから……教えてやったのよ。亮太君に、ね。あの子が高三の時だったかな。驚いてたわよぉ」
愉快そうに母は言う。亮太が高校三年生の時? 私はハッとして母に詰め寄った。
「ちょっと待ってよ、確か私が聞いたら母さん『彼女ができたみたい』とか何とか言ってなかった? あれって確か亮太が高三の時だったよね?!」
母は「あんなの嘘よ」と事も無げに言う。
「ああでも言わなきゃあんた亮太君に連絡取ろうとするでしょ? あんたたちはもう会わない方がいいと思ったのよ」
「どうしてそんなこと……。第一、何で今まで私にそんな大事なこと教えてくれなかったのよ!」
思わず声を荒げる私を母は憐れみに満ちた目で見る。
「母さん、あなたのことは自分の娘と思ってる。だから血が繋がっていないなんてこと、言う必要ないでしょ? 大切な親友の子ですもの。彼女はね、公園で首を吊って亡くなったの。可哀そうでしょ? たったひとり、寒空の下公園でゆらゆら揺れているのを見つけたのは母さんだった」
不意に背筋がゾクリとした。
――昔ここで首を吊った人の幽霊が出る。
あの公園に伝わる噂は本当だったというのか。私は何と言っていいかわからずぎゅっと唇を嚙んだ。
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