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1.初恋
亮太は三つ年下の従弟。父の兄の子だ。年の近い親戚といえば彼だけだったので仲は良かったが、距離的に離れていたので会うのは年に数回程度だった。
私が小学校に上がった年、父が不慮の事故で亡くなり義実家を頼る形で引っ越しをした。伯父家族は祖父が亡くなって以来祖母と同居していたので亮太と私はご近所さんになったわけだ。それからはお互いひとりっ子だったこともあり毎日のように一緒に遊んだ。外を駆けまわったり一緒にゲームしたり。亮太の両親も私のことを我が子同然に可愛がってくれていたが、母は不思議と亮太の家族と交流するのを避けていたように思う。私が亮太と一緒にいると露骨に嫌な顔をしたし、あんまり仲良くするなと言われたこともある。義母に資金的な援助を受けていた負い目からだったのか、私になかなか女の子の友達ができないことを心配してのことだったのか。何れにしても親からの干渉は疎ましく、私と亮太は次第に隠れて会うようになっていった。
お互いを男女として意識するようになったのはいつだったろう。ああそうか、母は私たちがこうなることを心配していたのかもしれない。だがそう思い至るようになった頃には時既に遅く、亮太は私にとってかけがえのない存在になっていた。
高校三年生の冬、受験を控えた私は遅くまで勉強をしていた。ふとスマホに目を遣ると亮太からのメッセージ。
――ちょっといつもの公園まで来てくんない?
既に母は寝ている時間だ。今までも夜中に抜け出したことは何度かある。私はすぐに返信した。
――うん、いいよ。気分転換したかったし。
私はダウンジャケットを羽織りマフラーを首にぐるぐる巻きにすると忍び足で廊下を歩きそぉっと玄関のドアを開けた。
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