楽しい夏休み

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楽しい夏休み

 それから、夏休みの間毎日、おばあちゃまの魔法を見て、おばあちゃまの魔法薬づくりをあのドライフラワーのお部屋のたきびの上に大きな薬草鍋を置いてたくさん作った。  薬草を使うのは勿論、魔法薬を作るのには、イモリのしっぽとか、カエルの足とか、何かの眼玉とか、ちょっとぎょっとするようなものも準備するのだが、もともとメイサはそういったものに対してはあまり気持ち悪いと思わなかったので、そのあたりには元々魔法使いの家の血が流れていた証拠なのかもしれない。  そうしている間に、メイサは、妖精もたくさん見たし、花によって歌う花が違うので、どの花がどの歌を歌うのかも覚えた。魔法薬を作るための薬草にするための花の種類も覚えて、おばあちゃまと一緒に刈り取った。  ただ、やはり自分の中から自然に魔法は出てこなくて、これで良いのかな?とすこし不安にもなった。  おばあちゃまは 「メイサは自分から魔法の力を出すのが苦手なようだね。」 「どれ、おばあちゃまが言ったことをやろうと思ってごらん?」  そういって、ごくごく軽い紙のお皿をテーブルに置いて、 「これをおばあちゃまの方に動くように集中してごらん?」  と言った。 「杖も使わないのだからできなくても構わないのよ。」  とも言った。  メイサは一生懸命頭の中で紙のお皿をおばあちゃまの方に動くよう念じてみたものの、どう念じればお皿が動くのかがさっぱりわからない。  紙のお皿はびくともしなかった。こんなに軽いのに。  メイサはとてもがっかりした。こんな状態で本当に魔法学校でやって行かれるのだろうか。  おばあちゃまは全く心配していない様子で 「だからできなくても構わないって言っただろう?」 「きっとメイサに合う杖があれば簡単に動かせるさ。」  それからこういった。 「メイサのお父さんとお母さんが夏休みにどうしてこんなに忙しいかわかるかい?」 「メイサのお父さんとお母さんは箒づくりの名人なんだよ。」 「魔法学校では毎年学校の授業で使う箒が壊れると作り直さなければいけないからね。」 「メイサが入学する予定のマーガレット魔法学校だけではなく、世界には沢山の魔法学校があるの。」 「そのたくさんの学校の箒を毎年夏休みの間に作り直しているの。」 「だから夏休みにはメイサと過ごす時間がない位忙しいのよ。」  メイサはびっくりした。 『そうか。魔法使いと言えば箒よね。』  それからおばあちゃまはいった。 「明日、魔法学校で使うものを買いに行きましょうね。」  メイサは昨夜はドキドキして眠れないくらいだったが、昼間、おばあちゃまのお手伝いをしているのでいつの間にかぐっすりと眠って、お日様と一緒に目を覚ました。  魔法学校で使う物ってどこで売っているんだろう。  おばあちゃまは魔法でメイサの好きなパンケーキを魔法でパパっと作ると温めた紅茶にミルクを入れて少し冷ましたものと一緒にテーブルに並べた。というか、食器が勝手に動いてメイサの前に並んだ。  そして、お腹が落ち着いた頃、おばあちゃまは庭にあった箒を持ってきた。 「これがおばあちゃまの箒よ。メイサはいつもお父さんの箒にクッションを縛り付けてそこに乗ってきていたのよ。」 「空なんて飛んでいたらメイサが驚いて落ちてしまうといけないので目隠しをしていたのよ。」 「今日はおばあちゃまの箒の後ろに乗ってね。慣れるためにクッションはなしで、目隠しもなしでね。」  おばあちゃまはワクワクするような笑顔でメイサを見て、にっこりと笑った。  そうして、おばあちゃまは、先に箒に乗って、メイサにおばあちゃまの後ろにまたがって乗るように言われた。  箒はおばあちゃまが乗ったとたんに浮き上がっている。おばあちゃまの足が地面から浮いているのだ。  メイサはこわごわと箒に跨った。思ったよりグラグラしないし、クッションが無くても平気だった。  そこで、おばあちゃまにつかまり 「つかまったよ。出発進行。」  と、おばあちゃまに声をかけると、 「じゃぁ、ゆっくりとあがるからね。手は絶対に離さないでね。」  さぁ、箒はゆっくりと上がり始め、やがておばあちゃまのお家もミニチュアみたいになった。  メイサは特に怖くはなかった。逆になんだか胸がわくわくした。 「大丈夫?メイサ?」  おばあちゃまは心配そうに聞いてきたけれど、メイサはへっちゃら。 「おばあちゃま、私は大丈夫。なんだかとってもワクワクする。」 「あらあら、やっぱりメイサには魔法使いの血が流れて居るんだねぇ。」 「普通の女の子はこんなに高く跳んだりしたら怖がるものだものね。」 「さ、じゃ、目的のお買い物に向かうわよ。」  おばあちゃまはそういうと、箒をピュ~ッと前に進めた。  いつも目隠しでお父さんの箒に乗ってきていたので、おばあちゃまのお家がどんなところにあるのか知らなかった。  おばあちゃまのお家はとても素敵な田園風景の中にある素敵な場所だった。  そこからピュ~ンッと離れて、少し家の多い町の中に向かって行った。    おばあちゃまの箒は町の中に降りて行った。その町にあるお店はメイサが知っている町とは売っているものが違うお店ばかりだった。
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