学校へ行くまでに

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学校へ行くまでに

 おばあちゃまのお家に帰った後、メイサは魔法学校の教科書を開いてみた。  まずはこの夏お手伝いしていたおばあちゃまの作っていた、魔法薬のことが書いてある本を読んでみた。  簡単な字だったらメイサは幼稚園の時から読めたので、1年生の教科書に載っている文字は全部読むことができた。  おばあちゃまが作っている魔法薬はとても複雑なものなのだと知った。  そして、おばあちゃまは魔法薬を色々な人から頼まれて作り、それでお金を得ているのだと言うこともおばあちゃまから聞いた。    そして、自分が一年生になった時に作る魔法薬はおばあちゃまの作っている薬に比べると入れるのは薬草だけだったし、すぐに作れそうに思えた。  おばあちゃまに許可をとって、魔法薬のお鍋を使わせてもらった。  おばあちゃまは最初の薬草を揃えるところまではメイサにやらせた。  いよいよ、魔法薬を作るときになると、人が変わった様に厳しくなった。 「メイサ、作り方を読んで簡単だと思っていたら大間違いだからね。」 「こんな簡単な魔法薬でも、失敗すれば大爆発することもあるんだからね。」 「さぁ、教科書の通りに作ってごらん。」  メイサは慎重に教科書に書いてある通り、水を測って入れて、必要な薬草も量をきちんと守って、順番に作っていった。  最初の魔法薬では途中で呪文を使ったりしないのでお料理とおんなじだ。  メイサは家でお母さんとよくお菓子を作っていたのでそれが役立ったようだ。おばあちゃまが余計な口出しをしなくても、初めてなのに教科書に出ているのと同じ色の魔法薬が完成した。 「ほほう、メイサには私と同じく魔法薬に関しては才能があるようだね。」  おばあちゃまは、メイサの初めての魔法薬を見ながら味を見てそういった。  そして、魔法薬を冷ます魔法をかけると小さな瓶に詰めてくれた。  出来上がった魔法薬は、とてもかわいいい不思議に光るピンク色の液体だった。 「これは、学校に行く時に持っていきなさい。」 「おなかが少し痛いとか、頭が少し痛いとか、指に小さなやけどをしたとか、そういう簡単なケガや病気の時に飲んだりつけたりすると治るからね。」 「ありがとう、おばあちゃま。」    メイサはとても可愛い瓶に入れてもらった、光り輝くピンクの薬を大切に魔法学校へ持っていくトランクのポケットにしまった。  その日はいろいろあったので疲れてしまい、メイサはお夕飯を食べている途中で居眠りを始めた。  メイサの横にいたスーズは 『やれやれ、まだ赤ちゃんじゃないの。これから思いやられるわね。』  と、ブツブツ言いながらもメイサの膝に乗ってゴロゴロと喉を鳴らし、今はすっかりおばあちゃまの猫からメイサの猫になっていた。  次の日には、メイサは初めて杖を使って魔法をかけてみることにした。  杖の魔法書に書いてある一番簡単なものを持ち上げる魔法。  この前と同じように一番薄い軽い紙皿で呪文を唱えてみることにした。  初めての呪文の唱え方はおばあちゃまが教えてくれた。  杖の使い方も教科書をよくよんで、おばあちゃまにも手を取って教えてもらった。  この前、紙皿を動かそうと思った時と違って、杖をもった瞬間にメイサは、紙皿が簡単に動くことを確信した。何かの力が杖を通じて手に宿ったのだった。 『これが魔法なのかしら?』  メイサは、自分はこの紙皿を動かせると確信した。  そして、おばあちゃまのいう事を良く聞いて、杖を慎重に動かしながらものを動かすための呪文を一緒に唱えた。  フワリ  紙皿が宙に浮いた。 「まぁまぁ、メイサ。とっても上手にできたわね。それも今回は自分でやってみようと思ってお皿が動いたんだから。メイサは間違いなく魔法使いの血を受け継いでいるよ。」 「ただ、もともとメイサはおとなしいし、自分の思い通りにならなくてもきっと我慢していたんだね。だから変わったことは起きなかったんだ。」 「我慢する心は魔女にだってとても大切なことよ。魔法を軽々しく使って良いわけではないのだからね。」 「杖を使った時に不思議な感じはあったかい?」 「えぇ、おばあちゃま。杖をもったら紙皿は絶対に動くってわかったのよ。」 「これが魔法の力なのかしら?」 「そうだね。メイサは道具を使ったり、魔法薬を使ったりして、みんなの役に立てるように魔法を使えるといいね。」  スーズもメイサが魔法を使う様子を見ていて、 『ほほぅ。赤ちゃんかと思ったけど、なかなかやるじゃないの。』 『おとなしいって言っていたから魔法学校では最初いじめられちゃうかもしれないわね。』 『まぁ、その時は私がメイサを助けてあげましょう。』 『きっと、私ほどマーガレット魔法学校の事を知っている猫はいないはずだから。』 『同じ家族のお供の猫になることはとても珍しいんだから。』  スーズもメイサと同じように9月になって魔法学校に入学する日を待ちわびていた。  メイサは初めて魔法使いの家系だと言われた宿命を、最初は嫌だと思ったり、困ったと思ったり、いろいろ逃げようと考えたのだった。  でも、おばあちゃまと過ごせたこの夏休みで、宿命をしっかりと受け止めて新しい世界である魔法学校に行くことを心待ちにしているのだ。  きっと大変なこともあるに違いないけれど、お供の猫のスーズと一緒に乗り越えて行ってくれると、おばあちゃまはもちろん、家でメイサの箒を作っているお母さんもお父さんもとても楽しみにしながら入学をこころまちにしているのだ。 【了】
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