発見

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発見

 メイサは小学校に上がる年になっていた。  今度の9月からは小学校の1年生になる。今は幼稚園を卒業して最後の夏休み中。  いつもの年と同じようにメイサはおばあちゃまのお家に遊びに来ていた。  夏休みはお父さんもお母さんも何故か普段よりお仕事が忙しくなるので、毎年夏休みはメイサ1人でお婆ちゃまの家に来るのだった。  おばあちゃまの家に来るのには、いつもメイサが幼稚園に行くとのは違う方法でお父さんが連れてきてくれた。  幼稚園に行くときにはお母さんの自転車に乗せてもらっていた。  でもおばあちゃまの家に行くときは違った。お父さんがメイサにしっかりとそれでいて痛くなんてなったことのない方法でキュッと目隠しをする。  その後メイサはどこかに座らされる。お尻で感じるのは、固い棒の様な物に小さなクッションを縛ってある感じ。そこにメイサを乗せる。  そして 「絶対にお父さんの背中から手を離してはいけないよ。」  と、いいつつ、離しても落ちないように、赤ちゃんみたいにメイサはお父さんの背中に縛り付けられていた。 『手を離さないんだから赤ちゃんみたいに縛らなくてもいいのに。』  メイサは口には出さなかったけど少し不満だった。  そうして準備ができるとメイサの足は地面から離れて顔には気持ちよく風が当たる。この感覚はメイサのお気に入りだ。  そうして、いつも幼稚園に着くくらいの間、お父さんの背中につかまっているとあっという間におばあちゃまの家に着くのだ。  お父さんが 「着いたよー」  といって、地面に足がつくとすぐにメイサを負ぶったままおばあちゃまの家の中に連れていかれ、いつもメイサが座っているおばあちゃまのリビングのソファーにポイッとおいて目隠しを外す。そうするとおばあちゃまが自分の座っているソファに座っていて、 「今年もよく来たね。いらっしゃい。」  と、ニコニコして待っていてくれる。  メイサがおばあちゃまとそんなご挨拶をしている間にお父さんはいつの間にかお家に帰ってしまっている。  メイサはだからいつでも、自分が何に乗っておばあちゃまの家に来ているのか分からなかったのだ。  その夏休みはメイサにとっては実はとっても大切な夏休みだった。これからメイサがどの小学校に通うのかを決めなければいけなかったから。  一応、名門のマーガレット魔法学校からは入学通知書が届いていた。もちろんメイサは知らない。そして、お母さんとお父さんは頭を悩ませていた。  メイサはおばあちゃまよりもっと前から続く魔法使いの家系。お父さんは魔法使い、お母さんも魔女だ。しかし、この夏休みになるまで、メイサは魔法の魔の字も使ったことがなかったからだ。  普通、魔法使いの家系の子供は、赤ちゃんの頃からちょっとしたことで知らず知らずに魔法を使う。おなかがすくとミルクを自分で呼び寄せたり、嫌なことがあると近くのお皿を揺らしたり。外に出ると自分の好きな花が空から降って来たり。  そんな不思議なことはメイサの周りでは一切おこらなかったので、両親はメイサはもしかしたら、魔法の力が宿っていないのかもしれないと思っていた。   しかし、魔法の力が宿っていない者には魔法学校から入学通知書は届かないはず。  ということは、メイサが使っていないだけで、魔法の力はメイサの中に宿っているはずなのだ。  もしくは魔法学校の間違いだ。    メイサに魔法の力が宿っていなかった場合は普通の小学校に入れてあげなければいけない。  幼稚園最後の夏休み。おばあちゃまといつもの夏の最初の挨拶をおばあちゃまのお家の素敵なリビングでしてから、メイサはおばあちゃまの丹精しているお花やいい匂いのする草でいっぱいの大好きなお庭に出て行った。  おばあちゃまのお庭には、幼稚園にあるような普通のお花もあれば、ここでしか見たことの無い不思議なお花もある。蝶々の形をしていたり、動物の形をしていたり。  そして、お庭の真ん中には温室があり、そこにも沢山の素敵なお花と、温室の横には風通しがよくて採ったお花をドライフラワーにするためだけのお部屋もある。  そこには、お部屋の真ん中でたきびができるようになっている。  メイサはお花畑の中を歩いていて、何か不思議なものがお花に止まっているのを見つけた。虫ではない。何か不思議なもの・・・  メイサがお話のご本で読んだような・・・  そう、これは、妖精??  キラキラとした小さな星型の粉をまき散らしながら音もなく花と花の間を飛び回っている。そして、妖精が飛び回って立ち止まった花たちは嬉しそうに歌を歌っている。  メイサはあまり驚いたので声も出せなかった。そして、大急ぎでお花の世話をしているおばあちゃまの所へかけて行った。 「おばあちゃま、大変。このお庭には妖精がいるわ。それにお花が歌を歌っているわ。」 「あら、メイサ。よかった事。妖精が見えたのかい?」 「え?おばあちゃまは妖精がいることを知っていたの?」 「そうだねぇ、メイサが気づくまでは黙っていようって、お父さんやお母さんとも話し合っていたからねぇ。」 「ちょっと待ってごらん。今、お父さんとお母さんに連絡してメイサに色々お話していいか聞くからね。」  そういうと、おばあちゃまはリビングに戻って、メイサについてくるように言った。  いつも見ているテレビにおばあちゃまが懐から杖を出して一振りするとお母さんが画面に現れた。  メイサはおばあちゃまが杖を出しただけで驚いたのに、いきなりお母さんがテレビに映ったのでもっと驚いた。  お母さんはすぐに事情を察したらしく、 「あら、メイサの中に何か魔法が見つかったの?お父さんはもう戻ってお仕事に行っちゃったわ。」  と、すぐにおばあちゃまに聞いてきた。  おばあちゃまは、メイサが妖精を見つけたこと、花が歌うのを見た事をお母さんに話し、メイサに魔法界の色々なことを教えてもいいか聞いた。  お母さんとお父さんは忙しいので、小学校に入るまでにメイサが知っていた方がいいことは、おばあちゃまに教えてもらいたいと頼んでいた。  そして、メイサには 「メイサ、あなたは魔法使いの家系なの。おばあちゃまもお父さんもお母さんもみんな魔法が使えるのよ。あなたは、これまで全く魔法が体の中にない様に見えていたから小学校の事でも悩んでいたのだけれど。」 「妖精が見えたなら大丈夫。あなたの身体には魔法が宿っているはずよ。」 「小学校からはおばあちゃまも、お母さんも通ったマーガレット魔法学校に入学だからね。これも宿命(しゅくめい)だと思って楽しんで頑張ってね。」  と、一気にいうと、画面から消えた。  全く事情を知らなかったメイサはしばらくきょとんとしていたが、 「魔法学校?」  と、大きな声で言っておばあちゃまを振り返った。              
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