第二話 香柏の森神

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見上げるような 巨漢(おおおとこ)。 その姿は 山に 熊ににて、 森の深淵に そびえ立つ 香柏(こうはく)(こずえ)に よくにていた。 ――わがなは フンババ。   かつて ウルクの王 ギルガメシュによって   その友 エンキドゥによって   うちたおされた 森である。 地が震え、旋風が巻き起こる。 土砂の髪は 濁流のごとく。 むき出しの 胸、肩、腹。 鋼のように 勇ましい筋が、 火を吹く山の 溶岩流のごとく、 雄々しく 力強く 脈打っている。 ――旅のごじんよ そなた   堂の北に そびえ立つ   山々を みたか。 漢は 狼のするように 猛る魂を 揺らすように いう。 (あお)い布が やっとのことで その固い腰を 覆うが、 隆々とそびえる 断崖の脚は、 むき出しの 大地。 ――香柏のしげる 森を みたか。 地が震え、旋風が巻き起こる。 またたくうちに あたりは 香柏の 森の(あお)へと しずんでいた。
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