魂花堂夜話・全八話

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導かれるまま 門を くぐる。 刹那 あたりは 闇に 閉ざされ、 あの 雪の 白に 似た 深く ふかい 霧は 跡かたもなく 吹き 去った。 星辰(せいしん)の天に 月は 無く、 百花繚乱の地は まるで 百万の星が 墜ちたように まばゆい。 (しろ)(あか)(あか)(あか)薄紅(うすくれない)(もも)(だいだい)()(あお)(あお)(あお)(あい)群青(ぐんじょう)(ふじ)(むらさき)(くろ)。 数多の 色が 溢れ 波と なって、 雲水を ふるわせる。 ――魂花堂(こんかどう)は こちらに 鈴のような、風のような、 水の ような。 声が 雲水を まねく。 咲き乱れる 花の なかを 導かれるまま 清き水 わたる 小川の ほとり 八角の堂へ 寄る。 がらんどうの そこで 笠をぬぎ、 しばし 待っていると 白の人が あらわれた。
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