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【①大火】
燃えている、京の都が。
燃えている、灰色の空が。
燃えている、叫んでいる。
全てが、地獄の業火のさなか。
雲水はそれでも、一歩踏み出す。
すでに背後の 堂はない。
雲水は独り 立ち竦んだ。
逃げ惑う人びとの さなか。
火は全てを覆い、天へ爆ぜ、
物も命も区別なく、差別なく。
呑み込んで噛み砕き、灰塵と散らす。
風、炎を連れ――西へ東へ吹き荒れる。
一人 また一人と、煙に巻かれ、
炎に巻かれて、倒れ伏す。
年寄り、小さな子供とつづき、
叫ぶ女たち、男たち。
雲水は立ち尽くす。独りきりで。
炎に焼かれた 家の柱が、
雲水へ 落ちようとするとき。
ふと見れば、左手に。
沙羅の花。
白の人が与えし 一日花。
はらりと舞いし 白き花弁。
一つ落ちて、景色が変わる。
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