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濃霧。
その無明の淵を、
うら若き 雲水(※修行僧)が独り
黒寂びた衣を はためかせ ゆく。
宇宙は呼吸をとめたように 静まり、
はてしない 虚空が
茫漠の かなたへと
その 透き徹る 両の手を
広げていた。
道 ゆけど 山。
山 ゆけど 道。
雲水の魂魄は すでに
疲れきっていた。
けれど 他に 道はなく、
独りの道を ひたすらに
歩き 進み ゆく。
山 ゆけど 道。
道 ゆけど 山。
濃霧。
その無明の淵を、
うら若き 雲水は独り
黒寂びた衣を はためかせ ゆく。
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