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「靴を作ってくれた上に、泊めさせてくれてありがとう」
少女は靴屋で一夜を過ごした。
少年はあれから少女の為に靴を作り続けた為に、普段の眠たそうな目つきから更に眠たそうに欠伸をしている。
「……どう致しまして。お姉さんのお陰で今日は臨時休業かな、……凄く眠い」
「それはゴメンね……最後に一つ訊いても良い?」
「……答えられる質問なら」
この街は何もかもが“灰”で満たされている中、彼の気持ちはどうなのか知っておきたいと、少女は思い浮かんだ言葉を選ぶ。
「──“灰色”は嫌い?」
少年からまた直ぐに答えが返って来る事は無く、暫く沈黙を保っていた。
彼は窓のある明後日の方向を向いて、少女もそれにならって振り向く。その先でグリズリーの姿が、靴屋のその部屋が高所にあるのか小さく見えた。街の何処かへ行くのを見送ると、少年は語り始める。
「……好きとも、嫌いとも言えない。灰色以外に他に色があるなら、ちょっと見てみたい。でも全てが無くなるのは嫌……かな」
現地人にとって、不幸せだけど慣れてしまった“いつもの日常”が無くなった時の“いつかきっと”は、人に寄っては恐れる時なのかもしれない。
「……お姉さんは旅人なら、他国へ入国する時の干渉のルールに気を遣ってる? グレイの街について何か知ったとしても、余計な事はしないでね」
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