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 宝石を見つける為の手懸りを一つでも与えてしまった時点で、誰がどんな言葉を投げ掛けても、誰にも彼女を止める事は出来ないのだ。 「そうかー、私は君に暫く会えないと思うと寂しくなるけどね。君の冒険譚が二度と書けなくなるし、仕事も……ね」 「大丈夫、いつかまた此処に来ますから」  少女は彼を気遣ってそう答えたのだろうか。 「……約束でもしてくれるのかい?」  彼女は彼と約束は、しない。  約束したら、会えなかった時の悲しみは大きくなってしまうかもしれない。きっと後悔するだろうと思ったから、ノーを答える。でも、 「あなたの書く話で“此処で会う”と書けば、磁石に引き寄せられる様にまた会えるのではないのでしょうか?」  希望はあった方が良いと、どの選択肢でも後悔しない様に言葉を紡ぐ。  少女はいつかの笑顔を彼の前で久し振りに見せて、そう答えた。 「それは、……その通りだね」  ノアールは彼女の笑顔につられる様に笑った。 * * *  一息ついたところで、二人は喫茶店を出た。店の前でお互いに笑顔で別れを告げる。  雪でしかない通りを先に行く少女を、ノアールは見送った。 「……約束ではないけれど、“また会おう”」
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