灼熱の大地

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灼熱の大地

 随分先へ行かれてしまった、知らない誰かの背中を追い掛けた。 「あつ……っ」  ──つもりだった。其処には誰も居ない。  身を焼かれそうな程の光の下、少女は広大な砂漠のど真ん中を歩いていた。  普段の彼女は全体的に赤く洒落た服を身に纏っているが、その炎天下の環境では色合い的にも流石に合わないと考えただろう。今回の環境に合わせて、半袖の黒いインナーと短パン、その上に身体全体を覆う程の水色のマント、頭はベレー帽の代わりにインディゴ色のターバンを巻いたりと衣替えしていた。  履き慣れた靴ならもう脱ぎ捨てた。  ただ砂に流されて足元を攫われてしまうよりは、裸足になって駆ける方が進みやすいだろうと彼女は感じたからだ。残酷な暑さに圧されて、すー、はーと荒い息を吐くだけに精一杯になる。時々、息が詰まって、たまに咳が出たりする。 「……」  その時は一度立ち止まる。  ゆっくりと咳を出したい時だけ出し尽くして、呼吸を落ち着かせる。次に貴重な水分を口に含んで、それからこの地での正しい呼吸方法というのを、すー、はーとまた荒い息を吐きながら模索して呼吸を整える。  どうやっても苦しい呼吸にしかならなくて、泣きたくなる。苦しくても同じ呼吸で必至に息を次から次へと、音楽で云うと連符で繋げていく。  そうして今、未だ生きてるんだ、  現実なんだと改めて実感する。  今を生きている現実だから、苦しくて、  苦しくても、この旅は未だ続いていく……  ──彼女が宝石(のぞむもの)を手にするまでは。 * * *  少女が懸命に歩く途中の事だ。  彼女が羽織っている水色のマントの内側から、何かがジタバタと暴れていると云うよりは、「開けて!」とノックされている様子があった。それ(・・)に気付いた彼女はマントを捲って声を掛けた。 「どうしたの?」
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