灰色の冷たい街

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 しかしある日、そのパンドラからの解放を試みようとその構造を研究する人が現れたそうだ。パンドラの目を上手く盗んで、街の最深部には一体何があるのだろうと、遥かな遠い昔日(いつか)の文献を探し出して調べ続けた。  またある日、街の防衛機構の建造に関する歴史書から、昔の街の地図を偶然見つけたらしい。それを頼りに街の最深部へ辿り着いたら驚く事に、無機物ばかりで中々目にする事が無かった、とあるお宝(・・・・・)が眠っているそうなのだ。 * * *  ノアールから聞いた情報は、言い伝えの様な話と街の位置だけだ。情報が未だ少ない為に、先ずは街の住人から聞いてみる必要がある。少女は視界に入った一人に尋ねてみようと早速動いた。 「あの……」  声を掛けてみた一人は直ぐに何処かへ通り過ぎて行った。無理に追ってもきっと煙たがられるだけだろう。彼女は諦めて他の人を見つけて、また声を掛けてみようとする。 「すみません……!」  今度は気付いて振り向いてくれたものの、チッと舌打ちしてまた何処かへ行ってしまった……。  その後も彼女は必死に声を掛け続けた。しかし街に居る人達、誰もが同じ反応をするだけだった。 「……」  誰も振り向いてくれないなら仕方ないと、少女は再び孤独で闇雲な宝探しを始めた。  街の通りに沿ってただ歩いていく。  少女の視界に入って来るのは、連なる様に出来た大きな建物、小さな民家の数々。やはりどれもが灰色でしかない。……灰色一色とは限らないが、剥き出しになった鉄パイプや歯車が必ず目に付く。  パイプの先から偶に吹き出る蒸気は、雲の様に綺麗な白い煙という訳でも無く、街の色合いに近い灰の濁った色だ。まるで煙が街を灰色で満たそうとしてる様にも見える。  街中なので当然、人が通りやすい様に道は整備されている。砂漠を歩いていた時よりはとても歩きやすい。
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