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「……っ」
……歩きやすい筈なのだがそう、今の彼女は裸足だった。足の裏は赤紫色に腫れて、まめも出来ては割れて血が出ている。割れたまめから見える真紅の血は宝石じゃないけど、まるで「自分は未だ生きてる」と教えてくれる様に輝いていた。
通って来た道を振り返って見れば、その血の跡が所々に出来ていた。今まで何処をどうやって歩んで来たのかをまた教えてくれている様だ。
迷ったとしてもこの血の跡を辿って戻って行く事にしよう。彼女がそう考えている内に、それは現れた。
お洒落な洋服や艶やかな皮膚が見えるという事も無く、剥き出しになった歯車が見えれば、目が二つでも無ければ、人ならざるものである事が明らかだ。
歯車と歯車が噛み合い、高速で回って動き出すものは、先人の書き手に習った言葉で云うなら“自動人形”と呼ばれる事だろう。
今もその幾つかの自動人形が、少女の視界の隅から隅へと見え隠れする様に忙しく動いている。その中の一つとお互い目が合い、両者は時間が止まった様にただ固まっていた。
この自動人形は一体これから何をするのだろう?
そう少女が考えている内に、自動人形の目は突然怪しく点滅する様に光った。
「コノ街ニ──害ヲ及ボス可能性アリ。従ッテ、コノ者ヲ排除スル」
「……はい?」
『排除』とはおしのける事で違いないだろうが如何にして……? 少女は呆然としていると羽織っているマントの隙間から、猫やら兎やら分からない二匹の小動物が久し振りにひょっこりと現れた。自動人形を見て、怯えた表情で少女に何か知らせようとする。自動人形の手をよく見れば、銃口らしきものが備わっている事に気付く。
そして彼女は自動人形から逃れる為に走り出した。
* * *
大事なものは幾つか持っていたけど、気が付いたら随分と減ってしまった。それでもその中の一つは、一つだけはギュッと抱えてもう二度と手放したくない。
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