9. まほらの道

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9. まほらの道

 夏休みに入った週の平日、僕達は『まほらの道』教団本部を訪ねた。  住職から紹介状を預かった上で、僕が教団に電話して日程を決めた。住職の名前を出したら、すんなり会ってもらえることになった。  その日は、僕、安部、馬場先輩、それに茜ちゃんも同行することになった。  当日は教団本部のある駅で皆で待ち合わせし、茜ちゃんと馬場先輩を引き合わせた。 「今日はありがとうございます。よろしくお願いします」  茜ちゃんは味方がまた一人増えたと心強く感じたようだ。 「いやあ……」  馬場先輩は頭を掻く。  人形に興味があるという下心で来てるので、純粋な茜ちゃんを前にして恐縮している様子なのがおかしい。  教団本部は都心のターミナル駅から私鉄の急行で一つ目の駅から、歩いて五分程の閑静な住宅街の中にあった。  上に瓦屋根がついた和風の弊で囲まれた敷地は広く、外観は寺院のように見えた。敷地への入り口は立派な数寄屋門になっていて、脇に『まほらの道』とだけ彫られた木彫看板が掛かっている。  怪しい宗教団体という雰囲気はなく、街に溶け込んでいた。  門は開いていて、信徒だろう、二人連れ、三人連れの人が出入りしていたので、僕達も中に入る。
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