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街灯に照らされた鳥居は確かに赤かった。
安部の顔が浮かぶと同時に、「恵!」と暗闇から声がした。
「え? まあ君?」
飯田さんが答えた。
鳥居の脇から、僕たちと同世代の男が出てきた。
「お前、恵と何やってんだよ」
まあ君と呼ばれたその男は、僕に答える暇も与えてくれず飛びかかってくる。咄嗟に避ける間もなく、僕は顔面にパンチを喰らって尻餅をつく。
「やめて! まあ君。違うの! 送ってもらっただけなの」
飯田さんはそう言ってまあ君を止めると、「ごめんね。森下君。彼なの。喧嘩した勢いで合コンに参加しちゃった私が悪いの。許してね」と僕に謝る。
(えっ……)
飯田さんが僕に謝りながらまあ君を引っ張るようにして去って行き、僕は赤い鳥居の前で尻餅をついたまま取り残された。
(赤って、鳥居の色か──!)
思わず心の中で叫ぶ。
翌日、左頬を腫らして大学へ行くと、学食で安部に会った。
「ハハッ、災難だったみたいだね」
安部は僕の顔を見て笑う。
「っていうかさ、お前、赤って漠然すぎるだろ! 予言するならもっと具体的に言ってくれなきゃわかんないじゃないか!」
僕が抗議すると、安部は真顔になる。
「あれは適当に言っただけだよ」
「適当?」
「うん。僕の適当な予言話を君が信じこんで暗示にかかり、自分でそういう状況を作っただけだと思うよ」
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