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「というわけでヒーロー登場のおかげで姫を救出、一件落着ってことで」  本社からの帰り道、侑は嬉しそうにそう言って笑った。 「何がヒーローだ。結局片付けてくれたのは磯山部長じゃないか。夏目くんはどちらかといえば台風の目だな」 「なんで?」 「社長にあんなこと言うし、金岡まで呼んでるし、突拍子もないっていうか破天荒っていうか」 「ごめん。それよりさ、俺のために辞めるとか言ってくれて……ちゃんと想われてるんだって、ちょっと嬉しかった。あと、金岡さんにもう会わないって言ってくれたことも」  でも辞めさせるつもりはなかったけどね、と侑は薫を見つめた。 「僕だって、守ってやりたいと思うことくらいあるよ」 「好きだから? 恋人だから? 大事だって思うから?」  立て続けに聞かれ、薫はその真剣な顔に苦笑を向けた。 「君が、僕のものだからだ」  その言葉を残して、薫は先へと進んだ。振り返ると、固まったまま動けずにいる侑の背中がある。それが可笑しくて、薫は微笑む。 「帰るよ、夏目くん。店に戻って、君を教育しなおさなきゃならないんだから」  さあ早く、と声を掛けると侑が慌ててついてくる。 「薫さん、今のは不意打ちすぎ!」 「早く戻るよ」  口を尖らす侑に声を掛けて薫は空を見上げた。  雲ひとつない青空は、今の薫の心にとてもよく似ていた。 
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