友人Fの本懐8 - 護摩の煙 -

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Fとの付き合いは長いがこんなに時間の掛かったモノは後にも先にもこれだけだった気がする。 「魂は天に昇らせるためには焼くって行為しかないって昔の人は考えたんです。ほら煙って上に昇っていくじゃないですか。だから火葬ってのも始まったんですね」 Fは彼女の父に説明する。 彼女の父も、納得したかの様に頷いていた。 成仏させるには焼くという行為しかないって事か…。 私もFの隣で頷いていた。 「成仏しない魂って水の傍にいる事が多いって言われてて、現に、今回は井戸の中にずっと居たんです。井戸から自力で出る事も出来ず、その井戸の周りに何等かの影響を及ぼす事によって、自分の魂が此処に居るって事を教えるしか無かったんです」 Fはポケットからタバコを出す。 「吸っていいですか」 とFは彼女の父に言う。 彼女の父は大きな灰皿をFの前に差し出した。
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