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「いい影響を与えるモノも居れば、悪い影響を与えるモノも居ます。今回は後者だったんですよ…」
関口の彼女もやって来て、関口の横に座った。
「仏教には道理という教えがあって、相手の事を考えて行動するって事なんですけど…。自分で身動きの取れない魂に対して、どうしてやれば動けるようになるのか、それを考えて除霊する事が基本なんです」
彼女も彼女の父も同じ様に頷く。
「井戸に対してはその水はもう完全に干上がっていて、役目は終わったからゆっくり休んでくれって事を伝える事。役目を終えた墓石に関しても同じで…。ただ、その役目を終えた事を伝えるのに、水を使うか、火を使うかだけの違いなんですよね」
墓石には水を掛け、井戸には火を使うって事か…。
私は俯いて眉を寄せた。
そこまでの事をFは祖父の寺で学んできたのかと感心した。
「墓石に残った念に関しては、正直、まだ残っています。それを作って戴いた無縁仏の墓石に入れました。庭の端か、或いは墓地にでも置いて下さい。井戸の方はまだ水が枯れていないのに、砕いた石を注ぎこまれた怒りの様なモンです。それを鎮める事で井戸終いが出来たと思いますんで…」
彼女の父もタバコの煙を吐きながら、私たち三人の顔を見ていた。
「何か凄いな…。自分らホンマに高校生か」
そう言うと声を上げて笑っていた。
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