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「凛子は、何お願いしたの?」
初詣の帰り道、友達の清水唯から聞かれた時、鈴木凛子は心臓が止まりそうだった。
「えっと……。唯ちゃんは?」
「私は『幸せになりたい』だよ」
結構漠然としてるね、と吹き出すと、もったいぶらずに教えてよ、と唯からせっつかれる。
「私も同じようなこと。あとは大学合格、かな」
マフラーに顎をうずめ、唯から目をそらした。
「あっ、そっか。今年は受験生になるんだから、合格祈願しなきゃいけなかったよね。なんで忘れてたんだろう」
唯の笑い声が聞こえてきて、ほっとする。さっきの言動は不審に思われなかったようだ。
「でも、神様なら『幸せになりたい』に大学合格も含めてくれるよ、きっと」
「だよねー!」
口元をマフラーで隠したまま、唯に笑顔を返す。
一番仲のいい唯にも、本当のことは言えない。早く大人になりたいとお願いした、なんて。
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