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    ◇  ◇  ◇ 「あ、ねえねえ! あたし、実は小説書いたんだ。初めてちゃんと最後まで書けたの! 読んで感想聞かせてくれない?」  昼休み、食堂で食べ終わって話しながらの穂香の問い掛けに、理央と早織が顔を見合わせている。  もともと穂香は、小さい頃から物語を考えるのが好きだった。空想好きというのだろうか、いつも自分の世界に入り込んでいたものだ。一時期は親や周りに心配されていたのも知っている。今はそれも個性と受け止められているようで安心していた。  それが高じて『お話』を書いてみたくなったのが中学の頃だ。  実は誰にも言ったことはないけれど、将来は小説家になりたいと漠然と考えていた。一つ作品を完成させられたことで、一気にその『夢』が膨らんだ、気がする。  当然、たっだ一つ書き上げたくらいで調子に乗ってはいけないと考える冷静さは保てていた。頭ではきちんと理解しているのだ。  けれど、油断すると勝手に暴走しそうな(はや)る心を、穂香はなんとか捉まえている状態だった。  高校生で大学進学を目指す穂香の本分は、やはり勉強メインの生活なのだから。
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