第一章

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第一章

俺「垣根徹」は、学生時代に必死こいて行った就職活動に失敗した。 本当は地元を離れ都会にある大手のコンサル会社に入社したかったのだが、最終面接で惜しくも不採用を食らった。 別にコンサル業界に興味を持っていたわけではない。ただ都会人として少しでも成り上がりたかったのと周りからチヤホヤされたかった。 その後、てっきりそこに入社する予定だった為に残された持ち駒(選考途中の企業)もほとんどなく、止むを得ず「地元で名が知れた大きな会社」という肩書と「親の賛同を得た」という理由で、俺は地元の大きな食品工場での就職が決まった。 入社して数か月は、正社員ではあったがパートのおばちゃんが複数いる中、まるで刑務所で行われるような単価3~4円の内職を長時間する業務が続いた。最中、時折繰り広げられる古臭いおばちゃんトークに心底うんざりしながらも、俺は耐える事しかできなく業務時間が過ぎるのをただただ待った。 それから少しずつ正社員としての仕事を任せてもらえるようになったが、それも「パートのおばちゃんのシフト作り」や所謂「おばちゃんたちが円滑に仕事が出来るような手間や工夫」といったものが多く劇的な変化は無かった。 シフト作りに関しては、「○○さんと一緒にやりたくない」や「連日で同じ作業をしたくない」とか言われ、不愉快な思いを堪えながら修正していった。 正直うんざりだった。 まるで介護施設に就職したみたいだった。 4年大学を卒業した身、こんなものの為に毎日8時間以上自分の時間を浪費していると思うと、鳥肌が立った。少子高齢社会で定年を過ぎた高齢者が未だ仕事をするのは分かるが、若者がそんな社会のツケを払うみたいに、年寄りに気を遣い続ける世の中でいいのだろうか? そんな状態でストレスが増えていく一方、同期は「早く出世したい」とか複数のラインの責任者でもある「主任」になる為に「どんな主任になりたいか?」等、将来の自分を想像している様子だった。 そんな様子を見て俺は失笑どころか、少し引いていた。 どうしてこの状況でそんな暢気なことを言えるのか、自分が置かれている立場に危機感を覚えないのか不思議だった。 どうにも同期と馬が合わないが故、自分だけが孤立してていくのが如実に分かった。 ある日、俺はそんな環境から少しでも抜け出したくて、地元を抜け都心で行われる「異業種交流会」に参加希望を申し出てエントリーした。
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