最終章

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最終章

話が終了するのを察した俺は、張り詰めた緊張感の中で「ふう・・・」と深呼吸するかのように一息つき、落ち着きを取り戻した。 空風さんの話を聞き、この特殊詐欺グループを作ったのが「彼自身」だと知った。 このグループの主な特徴として「警察」と「ヤクザ」といった対極の繋がりを持ち、これがその分野に精通していなくとも類を見ない異例の事だと分かる。だからこそこの組織のトップとなる人物はもしかしたら政界にでも繋がっているような国家有数の権力者なのかと思った時もあった。 しかしながらその憶測は違った。以前、異業種交流会で知り合った主催者でどこにでもいそうな普通メンの容姿を持つ目の前の男こそが、このグループ組織を束ねるトップだったのだ。 「俺、このグループのトップは相当な権力者だと思ってました」 衝撃の事実を受け、慌てふためく様子もないままに、それがどことなく落ち着いた口調だった為か面と向かう空風さんは「あれ? 別に驚いてない感じ? 何で?」と、逆に動揺した態度だった。 まあ俺からしてみれば、実はこの事実に対して全く予期していなかった訳ではなかったのだ。 彼は、俺がヤクザの杉本さんと会った日、「本部」のリーダーである作田さんと気軽に喋っていたのだ。そこを見て、「グループの代表でなくとも、もしかしたら幹部以上なのか?」とふと時間を置いてから勘繰っていたこともあり、的中とまではいかないが的外れではなかった結果に正直そこまで驚かなかったということだ。 「いや。以前、本部のリーダーの作田さんと気さくに喋っているのを見て、もしかしたら幹部以上かなーって」 「ああ、そういうことか、垣根も鋭いなあ。彼とも長い付き合いだからついいつもの口調が出ちゃってたか」 その返答に空風さんはすぐに納得がいった様子で、先程の態度と打って変わって、話の内容の重さを紛らわすようににこやかにそう言った。
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