第一章

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交流会の当日。 社会人になり半年が経った頃、いつもスーツと作業服しか着ていなかったので社会人になってから一度も衣服を購入しなかった事に気づいた。買いに行くのも面倒なので、今ある衣服で出来るだけ洒落た格好をしてから電車を乗り継いで現地に向かった。 週末の全国チェーンのカフェ店内で行われたそこでは合計10人程の男女が集った。 男7、女3人の比率。全員が揃うと、中央の所謂「お誕生日席」に座る主催者の「空風俊也」という20代後半くらいのフツメンを筆頭に一人ずつ自己紹介をしていき、それからは適当に喋ったくらいで交流会は幕を閉じた。 中には知り合い同士なのか慣れ親しんだ会話をする者もいたが、やはりほとんど全員が「初めまして」なので大して盛り上がることも無く、皆無難な話題から先陣を切っていって無難に答えている様子だった。 中には結婚相手を探しに来た合コン目的の女性もいたが、俺は全く興味が無かった。 しかしながら、一般的なサラリーマンの俺は「こんなことを開催する人は一体普段は何をしていて、何で稼いでいるのか?」と疑問に思った。 私語も無く延々と手作業をしている風景を毎日見ている自分からしたら、こうしてへらへらと笑って喋る主催者に対しビジネスとして興味があったのだ。 結局、輪を取り乱すことを遠慮して切り出せなかったが、最後にここに揃った全員とLINEを交換した事で、俺は辛うじて職場以外との繋がりを獲得したのだ。 後日、「どんな生活をしているのか」どうしても気になった俺は主催者の「空風さん」に今回の交流会のお礼もかねて連絡をとってみた。 その後、文面上で会話が続き、少しばかり自分の置かれた環境や悩みを話してから、彼の生活について興味がある旨を伝えると、向こうは改めて「次は2人だけで直接会って話さないか?」と提案された。 次の週末の昼、早速待ち合わせのイタリアン料理店で落ち合うことにし、2人でナポリタンをすすりながら仕事内容について聞いてみた。 すると彼は、これでもグループ会社の社員であり普通に働いている様子だった。 自分とは違い、労働とは違う形で稼いでいる人種を見つけたと思ったが、思わず当てが外れ現実の閉塞感を感じてしまった。 まあ、見たところ彼に特別感は無く、どこにでもいそうな「フツメン」という印象もあった為、そう言われればそうなのだろうが・・・・。 自分と同じサラリーマンであることに少し落胆したが、どうやら俺の用に朝スーツで出社して固定時間や残業があるわけではなさそうだった。 かつ、誰でも出来るような仕事をしており給料もそれなりに貰っているようで、その実態を掴むべくさらに踏み込んでどんな業務内容か聞いてみると「警備会社」とあっさり答えてくれた。 そして、まだまだ人が少ない会社だから「もしよかったら」と勧誘される方向となり、いきなり即答は出来ないので前向きに考えてみる流れでその場は終了した。
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