第二章

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第二章

空風さんから紹介されたグループ会社はいくつかの会社が統合して成り立っており、俺は現警察官で空風さんの幼馴染でもある「米沢」という人物が斡旋して設立した「RY社」というオフィスビルの警備会社に配属された。 20年以上生きてきて「RY社」という警備会社なんて聞いたことがない上、調べても簡素なHPしか無いところを見ると小規模で平凡な小企業なのだと容易に想像できた。又、それに伴って学生時代に警備のバイトをしたことが無いので、「オフィスビルの管理と警備が主な業務」ということだけ抽象的に理解し、ドラマや映画等の偏見を踏まえたイメージで、初出勤を向かえることとなった。 深夜になる手前、事前に知らせられていた配属先のオフィスビル内。 入社前日にレンタルした厳かな警備服を着て、言われるままに懐中電灯や無線をはじめとした備品を腰に携えると、素人ながらも恰好だけは一丁前の警備員になった。 その後、「砂木」と言う少し変わった苗字の男性社長に軽めの挨拶をもらい、指導係の「国元彩音」という同い年くらいの女性社員を紹介してもらった。 彼女は黒髪ショートカットで細目が特徴的な顔だちをしており、オドオドしていた俺に「よろしく」と簡素な挨拶だけしてきた。 砂木社長が彼女の事を名前の頭とお尻を取り「くーね」と親しげに呼ぶので、同様に俺は彼女のことを「くーね先輩」と呼ぶことにした。 先輩は不機嫌かつ程素っ気ない態度だったが了承してくれた。 社長と別れた後、早速、施設警備の業務に移行する。 まずは管理室を案内された。畳4畳くらいの狭いスペースで机の上に置かれたモニターが特徴的な部屋だった。後はパイプ椅子やら質素なもので、なんだか弱小高の部室のようなところだった。 次に、実際に見回り業務を実践する。くーね先輩が真っ暗闇のビル内部を懐中電灯一つで目先を照らしながら進んでいく。まだ施設の間取りや施設内部の詳細を知らされていなかったが、とりあえず何も考えず後ろをついていく。 仕事内容は、主に夕方~朝方までの夜勤勤務の施設管理業務を行うもので、具体的にはオフィスビルの施設内を一定時間徘徊する警備業務だった。 一通り回ってみて感じたのだが、空風さんが言っていた通り何の知識もない未経験でも十分に熟せるもので・・・、というか前職でフルタイム勤務だった自分からしたらどこか物足りないくらいだ。 終始急くこともなく、見回り以外は先程の管理室でモニターを見ており、時間になれば施設を見回るという簡単なお仕事だ。 簡単な業務なので、2日目からは一人で施設内を回ることにした。 案の定、見回りから帰ってくると先輩は毛布をかぶって熟睡していた。 用もないのに起床を促すと怒られそうだったので、俺は簡単な部屋の整理をしてから仕方なくスマホを取り出しソーシャルゲームに勤しむことにした。 1時間弱が経ち、流石に時間をつぶせるモノが無くなってきた。 「今度からは暇つぶしできる物を持ってこよう」と何度目か決意した頃、くーね先輩が起きた。 「あー、寝たー」 間の抜けた欠伸と一緒に気の抜けるようなな台詞がこだまする。 「やっと起きました?」 あまりにも暇だったので、上司にも関らず即座に不躾な声をかけた。 「うん。あれ?何してたのアンタ」 「暇すぎて死にそうでしたよ」 その言葉に彼女も経験があるようで「それは間違いないな」と軽快に笑われた。 以降、寝起きの先輩を無理やり会話に参戦させ長いこと他愛ないことを喋って時間を潰していった。
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