第二章

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警備会社に転職してから約一か月が過ぎ、初めての給料日を迎えた。 もちろん入社前に基本給やその他諸々の手当の話をされたが、当時これから入社する会社に対して「金に細かい奴」と思われたくなかったので、あまり注視していなかった。 だからこそ実際に給料明細を確認した時、こんな楽な仕事にも関わらず給料は新卒で入った会社よりも僅かだが羽振りが良いくらいで驚いた。 これには何か訳があるのか、その日の内にくーね先輩に理由を聞いてみたらどうやら「グループの他の部署が稼ぎ頭」となっているらしく、それのおこぼれをもらっているみたいだった。 その状況を知ってなんだか申し訳ない気持ちになり「このまま会社のお荷物でいいのか?」とやるせない気持ちにもなった。思わずグループの実態に対し無知だった気持ちを彼女に吐露すると「うちは『親衛隊』だからな。気楽にやれ」と吐かれた。 「え?」 聞きなれない言葉に思わずそのまま素で聞き返した。 「? ああ、おまえは知らなかったか」 意外にもそういう彼女は少しばつが悪そうだった。 「グループ会社」と聞いておきながら今まで詮索することをしなかった俺は、この際、その「親衛隊」のことも踏まえて色々と聞こうと思い、何度か聞き返してみたが、くーね先輩は頑なに教えてくれなかった。 その様子から「親衛隊」というキーワードにただならぬ気配を感じつつも他に聞く当てがなかったので、先輩を除き唯一の関係者である空風さんに久しぶりに連絡をしてみた。 「実は給料面でご相談なんですが、前職と比べて肉体労働でも無いのに給料がよかったんでその実態に少し不安になっちゃって・・・。ほら今って不景気で『最低賃金が~』とか言われてるじゃないですか」 まずは堅実な給料面から話を切り出してみる。が、その文面上から今の仕事に不満気味に思われたのか、空風さんから「前職の多忙さが恋しくなったのか?」と返信が返ってきた。 そんなことはないのだが、それでも話の真相を確かめたい一心で先輩に聞かれた「親衛隊」のことを直球でそのまま伝えると、確かに他の部署に「本部」と呼ばれる組織があり、そこがグループの核となっているようだった。 こんなことなら初めからそう言えばよかった・・・。 それから仕事前に会ってくれると言うので、いつかのイタリアンな店ではなく、今度は都内から離れた老舗のラーメン店を紹介してもらいそこを待ち合わせ場所にした。 俺は大盛スタミナラーメンに、卵とネギのトッピングをプラスして、空風さんは単品ではなく、一緒にチャーハンもセットで頼んでから、話の本題に入った。 「給料面で言っても、おまえが以前いた職場もそんな感じじゃないか?新米のおまえでも良い給料もらってたじゃないか」 「いや、そういうもんですか? それとこれとは違う気がしますが・・・」 1年足らずで辞めてしまった前職には悪いが、それは今後何年も継続的に勤務してくれる。所謂、「未来の投資」も含めた給料額だっただろう。 「他の部署が稼いでいるから自分は楽していていい」とは根本から異なるはずだが・・・、それでも空風さんは「そういうもんだよ」と平然と肯定する。 ここまでくると、くーね先輩に引き続きなんだか彼らの同行が怪しく感じるようになってきた。 「じゃあ、その『本部』っていうのはどういうことをしてるんですか?」 「うーん、口で説明すのるのは難しいなあ」 「そうなんですか」 「でも、いいよ垣根なら。今度見学してみる?」 流石に今日はそのまま仕事があるので、後日、空風さんに「本部」と言われる小さな事務所に案内された。 そこで俺はグループの実態を知ることとなった。
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