第三章

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「お疲れ様です」 丁度一か月ほどが経った。 あれからの俺は、夜は施設警備を務めながらも、日中は「本部」で特殊詐欺を行う詐欺師の顔も持つようになった。 「本部」の面子は驚くことに自分よりも若い連中が多く、俺は生まれて初めて自分より年下の奴に敬語を使うことになった。 俺が主に担当する特殊詐欺は「色恋モノのマッチング詐欺」だ。 要は「若い女性になりすまして、Hなことをする代わりにお金をもらう」というものだ。勿論そんな女性なんて存在せず、連絡の後に振り込まれたお金だけ拝借してとんずらする業務だ。 やり方はいたって簡単。 マッチングアプリに登録して、連絡をくれた男性に少し話をしてからLINEに誘導、そしてLINE内で出会える日時を決め、出会う前にポイントでのやりとりに話を進め、そのポイントをもらうといった手順で行う。ポイントは現金化したりしなかったり場合による。それに関しては管轄外で別動隊がいるのであまり関らない。 使用するマッチングアプリはこれがびっくりしたのだが、恐らくアプリ検索で「マッチング」と検索すると上位に出てくるものが多くメジャーなものを使用していた。 俺の場合はそのアプリを使って、在日留学生のフリをして「日本語が流暢に喋せないといった理由で出来るアルバイトが限られ、そういったものに手を出している」といった設定で、信頼性を持たせ連絡をとっていった。 プロフィールはどこから画像をとってきたのか若い女の顔写真を貼り付けプロフィール欄には「LINE→こちら」のように大々的に別のSNSのIDを晒していた。 あまり知名度が無いSNSは怪しまれるので推奨しないことを言われ、他、時間でメッセージ内容が消えたり、内容が漏れず秘密裏にことを進められるモノもあるらしいが、俺はあまり使ったことが無い。 顔やいくつか女体部位の画像を予めストックしてあるので、それを送れば性欲がある男性は懐疑心を抱く前に飛びつくのだろう。連絡自体は向こうからくるので最初のアプローチは特にしなくて良い。「こんにちは! ○○です。 よろしくね!」等ありきたりな挨拶や、顔や体の写真を見て明らかにヤルことしか考えてなさそうなメッセージが届くことも多々ある。 メッセージが届くと、普通のマッチングアプリでやっているように自己紹介からはじまり、在日留学生という設定を重んじて「日本語があまり上手じゃない」「通じてる?」等をいれる。内容はいちいち考えて打つことがないようにいくつか典型分というものもある。それを随時打っていくため、時々会話内容がかみ合ってなくて焦るが、それでも結構LINE交換までもっていくことが出来る。 LINE交換後もしっかりとメッセージが届くと業務内容としては、一段落ついた証拠だ。 そこからは規制で出来なかったHな女体の部位画像も貼り放題なのでそういった武器を用いて、 直接会う日時まで決めてしまう。ここまでくると連絡先の男性も徐々に怪しいと思っているだろう。こちらは作業感覚なので目的を早まってしまい段々とメッセージが雑になってくるが、胸や太もも等が露になった画像を添付し、更には「私とヤリたくないの?」などと煽ってみるのも効果的だった。 そして、遂に会う日時、所謂実際に会ってヤル日を決めると、作業は正に大洲目だ。 俺の場合は、決まって家の近くのコンビニで待ち合わせにする。もちろんその近くに俺は住んでないし、その近くに留学生もいない。何故コンビニなのかというと、そのコンビニで現金をポイントに変えてもらうためだ。最低1万円、オプションをつけての万単位でのやり取りになる。 コンビニ内のメディア端末を使い、そこに現金を振り込みポイントとして購入し、その領収書とレシートを信用の為に写真で撮って送ってもらう。 それまでが俺の仕事だ。 そうするとそこに記してある番号をこちらで登録してしまい、そのポイントをそのままパクってしまえる。 自分自身、ここにきて「現金をポイントに返金」と言われると怪しくなってやめてしまうのではないかと思ったが、理由があれば人は納得してしまう生き物のようで「現金をもらうと怪しまれる」等、いろいろと後付けでメッセージを送り、やはりHな画像を送ることで相手の欲の一押しをさせる。 一口一万円だが、これを何度かやると数万が分単位でグループに入ってくる。 ずっとPCに張り付いているわけではないので、簡単な業務だ。至ってチャチなシステム。しかし、これを何十回も複数人で行い、更には他にも稼げる特殊詐欺をやっている班あるので、なかなかの稼ぎになるのは明白だった。
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