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side 相馬
入る学校を間違えた
ここに来てから何度思ったことだろう。
地方出身の自分ですら聞いたことのある名門校。
ほとんどが初等部からの内部生で、高校から入学するためにはそれはそれは狭い門をくぐらなければならなかった。なぜなら唯一、完全に実力のみで評価してもらえる方法であるため、外部生で入るにはとてもつない勉強量が必要だったのだ。
そんなところに自分が入れれば、なんて誇らしいことだろうかと思った。それに女の子が苦手だったため、男子校という点も気に入って、受かるために沢山勉強した。
そしてその甲斐あって無事に入学することが出来た。
なのに蓋を開けてみたら、
絶望の一言だった。
数人の外部生として注目されていたのか、まず教室に入った瞬間に聞こえたのは溜息。「期待はずれ」と囁かれ、とても歓迎されてるようには見えなかった。
それからというもの、まるでいないもののように扱われた。自身が人見知りということもあって、話しかけることも出来ずに、友達なんて1人も出来ない始末。
同室の人にすら、入寮初日に心底落胆しましたといった顔をされたっきりで、会ってないし。
容姿のいい人を見てはキャーキャーと騒ぎ立てる同性の男達に最初は驚きはしたけど、日が経つにつれてそれにも慣れてくる。と同時に、この学園の生徒に軽蔑と嫌悪の感情だけが募っていくばかり。
元々同性愛に偏見はなかったものの、この学園に入学してからは日に日に嫌いなものになっていった。
友達なんていらない。
こんな奴らと関わりたくない。
そうして率先して1人行動をとるようになり、至って平穏な日々を過ごしていた最中、キャンプ合宿であの『天宮瑞樹』とペアになってしまったのだ。
天宮瑞樹といえば、Sクラスに留まらず、学年で1番と言っていいほど人気のある有名人。生徒会に入ったとの噂もあって、最も関わりたくない人の1人だったのに。
───最悪だ、終わった。
カッコよくて優しくて紳士と謳われる彼だけど、僕にとってはそんなもの関係ない。それについ先日、彼を押し退けてぽっと出の自分がテストで1位を取ってしまったところなのに。
きっと何か言われるんだ、殴られて脅されるに決まってる。
そう思って、ビクビクしながら迎えた当日。バスの中で初めて言葉を交わしたが、特に何も起こらなくて拍子抜けした。
いやでも、人目があるからだ、部屋で2人きりになったら豹変するはずだ。
そうに違いないと、なるべく会わないように布団に潜ってやり過ごしていた。
なのに、油断してた時にお風呂から上がった彼と顔を合わせてしまったのだ。
どうしようどうしようってグルグル目を回していたら、名前を呼ばれて体が跳ねた。近づいてくる音に身構えたけど、いざ言われたのは心配するような言葉で。
え?と思う間もなく頬を撫でられて、微笑まれて、つい顔が赤くなってしまった。顔がいいって狡い。
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