13人が本棚に入れています
本棚に追加
ユリちゃん
ユリちゃん。僕の大好きなヒト。
ユリちゃんはまだ、僕のことを好きなのだろうか? 子供の頃は僕と良く遊んでくれた。どこへ行くも、いつも一緒だった。
ユリちゃんが大きくなるにつれ、だんだんと僕との時間が減った。ユリちゃも忙しそうだったし、仕方のないことだとは分かっていたけれど。
やっぱり淋しい。
ユリちゃんがいなくなってから二年が経つ。クッションに身体を預け横になるのはとても楽だ。最近の僕は、こうやって横になっていることが多い。
あまり動きたくないんだ。食欲も殆んど無い。どこに顔を向けても、僕の周りはぼんやりと白んで見える。目が変なんだ。
ユリちゃんは、たまに帰ってくる。
玄関からユリちゃんの声が聞こえた。
「ケンイチー、ケンイチいる?」
僕はここにいるよ。いつもの場所。
ユリちゃんが僕のそばに来てくれた。ぼやけて良く見えないけど僕は耳がいいんだ。ユリちゃんから二つの心音が聞こえる。
「ケンイチ、ちゃんとご飯食べてる? 食べなきゃだめだよ」
分かってる。そうしたいけど、とても疲れるんだ。
「また来るね」
そう言って、ユリちゃんは帰っていった。
最初のコメントを投稿しよう!